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奈良地方裁判所 昭和29年(行)7号 判決 1958年9月16日

原告 小西宗四郎

被告 桜井税務署長

訴訟代理人 今井文雄 外四名

主文

被告が、昭和二七年一〇月二三日付を以てなした、原告の昭和二五年度分および昭和二六年度分所得税の各確定申告に対する各更正決定は、これを取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、双方の申立

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告指定代理人は、原告の請求棄却の判決を求めた。

第二、双方の事実上の主張

一、原告の主張

1、原告は、肩書住居で、呉服の売買業を営んできたものであるが、昭和二五年度及び昭和二六年度の各所得税について、政府の承認をうけ、青色申告書により、それぞれ、つぎのとおりの確定申告をした。

(一) 昭和二五年度分

申告年月日 昭和二六年二月

所得金額 一二六、八〇〇円

税額     八、二〇〇円

(二) 昭和二六年二六年度分

申告年月日 昭和二七年三月

所得金額 四九八、八七一円

税額   一一三、六六〇円

2、ところが、被告は、昭和二七年一〇月二三日付で、右各確定申告書に記載された金額について、つぎのとおり更正決定をなし、右更正通知書は、右更正通知書は、同年一一年七日、原告に送達された。而して、右各更正通知書には、右各更正の理由として、1売上金(収入金額)収穫物の過少(過大)2製造原価又は販売原価の過大(過少)3経費の過大(過少)4所得金額の過小(過大)と記載されていた。

(一) 昭和二五年度分(甲第四号証)

所得金額 七五二、七二一円

税額   三〇七、二三〇円

加算税   一四、九五〇円

(二) 昭和二六年度分(甲第五号証)

所得金額 八三八、四八二円

税額   二七一、一一〇円

加算税    七、八五〇円

3、原告は、右更正決定額に対して異議があつたので、昭和二七年一二月五日、大阪国税局長に審査請求をしたところ、同局長は昭和二五年度分については昭和二九年八月三〇日付で、昭和二六年度分については昭和二九年八月二日付で、それぞれつぎのとおり、審査の決定をした。

(一) 昭和二五年度分(甲第二号証)

所得金額 七五二、七〇〇円

税額   三〇七、二三〇円

加算税   一四、九五〇円

(二) 昭和二六年度分へ甲第三号証)

所得金額 八三八、四〇〇円

税額   二七一、一一〇円

加算税    七、八五〇円

そして、右各審査決定通知書は、原告に対し、昭和二九年九月八日送達されたが、昭和二五年度分の審査決定の理由は、請求にかかる所得金額には収入金の脱漏、経費の過大計上等があり、審査請求は理由がないが、過少申告加算税については計算誤があるので一部取消をするというにあり、又昭和二六年度分の審査決定の理由は、総所得額について減額する理由がないというのである。

4、併しながら、本件各更正決定は、つぎの理由によつて、違法なものである。

(一) 本件各更正決定のなされた当時施行されていた所得税法(以下旧所得税法と略称)第四六条の二の第一項には、政府は、青色申告書を提出することを認められている年分に係るその提出を認められている所得について、更正をなす場合においては、その帳簿書類を調査し、その調査に因り、所得の計算に誤があると認められる場合に限り、これをなすことができる。但し、申告書に記載された事項によつて所得の金額及び所得税額又は損失の額の計算について、第九条乃至第一五条の二の規定に従つていないことが明かである場合又は誤がある場合においては、当該事項につき更正をなすことを妨げない旨規定され、又、同条第二項には、政府は、青色申告書について更正をなした場合においては、更正の理由を附記しなければならない旨規定されている。

この事は、所謂青色申告納税制度によつて、我国の中小企業者に、取引全部について、原則として、複式簿記による記帳義務を負わせ、この記帳に基いて所得の申告をさせ、以て、記帳経理の習慣を植え付けて科学的経営への基礎を確立し、納税者側の帳簿に基かない漫然たる低申告と、これに対する徴税官庁側の具体的個別的な調査に基かない専恣な更正決定という悪循環を断ち切り、更正のなさるべきときには、その理由を具体的に明確にして、納税者を反省せしめ、以て、明朗な正しい申告納税制度を確立せんとする意図の明文上の一の現われであつて、右規定によつて明かな如く、青色申告書について更正をなす場合、その帳簿書類を具体的に審査し、誤があることが判明した場合でなければ更正決定ができない、即ち推計によつて所得額の更正をなすことは許されないのであり、かつ又、更正決定をなす場合には、具体的にその理由を附記しなければならないのである。

(二) ところが、(1) 被告は、原告の帳簿書類を具体的に審査して、所得の計算に誤があること或いは帳簿書類の不正記載の事実があることを発見できなかつたのに、合理的な根拠のない差益率を定めて、これにより、売上高を逆算推定して本件各更正決定をなし、かつ、(2) その通知書には、右各更正の具体的理由の附記をしなかつたのである。右(1) の事柄は、つぎのような一連の事実によつて明らかである。

イ、原告が本件各確定申告をなした前後に、桜井税務署の徴税係官は、度々、原告の帳簿書類を検査しているのである。従つてもし、各確定申告前に、当該係官が、帳簿書類の不正記載を発見しておれば、直ちに、その旨指摘すべき筈であり、又、各確定申告後に発見しておれば、本件各更正決定の理由に、具体的に、その旨指摘できた筈である。

ロ、納税者の所得額の確定申告は、例年二月から三月中旬にかけてなされ、徴税官庁によるその認否の決定は、五六月頃迄になされるのが通常であるところ、原告の場合、昭和二五年度分の確定申告については申告後一年七カ月、昭和二六年度分の確定申告については中告後一年七カ月、昭和二六年度分の確定申告については申告後七カ月を経過した昭和二七年一〇月二三日に一括して、各更正決定がなされ、更正決定が異常に遅れてなされている。

ハ、右の如く、異常に遅れて各更正決定がなされながら、右更正通知書には、具体的な不正事実の指摘がない。

ニ、のみならず、本訴が昭和二九年一〇月に提起されてからも、被告は、当初、右各更正決定の具体的理由を示し得なかつた。

(被告は、昭和三二年一一月五日付準備書面に於て、始めて、後記被告主張の2の(一)(二)の具体的事由を示したのである。)

(三) 即ち本件各更正決定は、右(二)の(1) (2) に於て述べた如く旧所得税法第四六条の二の規定に違反するもので、青色申告の承認を取消す等の処分をした上でなければ、許されないところである。併しながら、右承認の坂消はなく、かつ、本件各更正決定は、前記の如く、法規に違反するから、(仮に、その後の調査によつて被告主張の2の(一)(二)の如き更正事由を発見したとしても、それは将来の更正の事由とはなつても、既往に遡つて、本件各更正処分を正当づけるものではない。)違法として取消さるべきである。

(四) 被告は、桜井税務署員増井常男の調査の結果、(1) 原告の売上帳の記載方法に所得税法施行細則第一一条違反の事実(2) 売上高及び(3) 株式取引の各記帳の脱漏並びに(4) 借入金の仮装計上の諸事実があつたとして、これを本件各更正手続の正当であることの理由の1つとするが、失当である。

右(1) の点について言及すると、右施行細則第一一条の規定は、卸売等大口の取引をする業種を対象としたもので、小売商に適用することは不適当であるから、法も、これを認めて除外例を設け同条本文但書に於て、小売の現金売上については、取引の年月日、日々の現金売上総額及び取引回数を記載すれば足るものとしておるのである。原告は、右但書に従ひ記帳しており、唯、取引回数の記載を省略することにつき、慣例上、正式に、被告の承認をうけていないが、桜井税務署係員の了解は受けているのである。

右(2) の点について言及すると、この点についての被告の主張は差益率を根拠とする所得の推計から出た独断にすぎないことは後記の通りである。

右(3) の点について言及するど、原告が株式取引に関する記帳をしてなかつたことは争わないが、これは当然のことである。会計は、事業の異る毎に各別に区分して記帳すべきで、原告が青色申告の承認をうけたのは、呉服売買業の営業所得についてであつて株式の売買は営業目的になつていないし、又、有価証券を右呉服売買業の資本に加えていないから(甲第七号証の二参照)、右事業の帳簿に記載しなかつたのは当然の事で、もし、記載するとすれば、右施行細則第一六条の規定によつて、別個の帳簿に、事業外収入として記載すべきで、本件帳簿とは関係のないものである。

右(4) の点について言及すると、借入金一、二〇〇、〇〇〇円が仮装であるというのは、被告の独断である。そもそも、右金員が借入金であるかないかは、昭和二四年度の所得に関係し、同年度の所得の査定に際して起る問題で、借入金(他人資本)でないとすれば資本金か利益金とみる外ないところ、昭和二四年の所得の査定に関して、桜井税務署員は、これを所得の隠匿(利益金)と独断査定をなしたので、原告は、之を不当として、昭和二五年に審査請求をしたのであるが、当該係員は、これを、大阪国税局長に進達しないで、原告の商品を差押えて圧迫を加え、右審査請求の取下を強要するので、原告も権力に屈して、昭和二五年一〇月二七日、右取下をなしたのである。このように、右借入金は、昭和二四年の所得査定に当り、利益金として課税されたのであるから、利益積立金として処理されてもよいところであるが、真実は借入金であるから、借入金として、正規の簿記の原則に従つて、昭和二五年度分の帳簿に繰越し記載したのである。而して、右金一、二〇〇、〇〇〇円が借入金であるにせよ、利益金であるにせよ簿記の財産法(貸借勘定)によると、それは負債として昭和二五年度分の帳簿に繰越し記載されるのであるから、昭和二五年度分の所得の計算に影響を及ぼさないのである。そうすると、問題は昭和二五年度に発生した借入金一一五、〇〇〇円であるが、これを仮装とするのは、被告の独断である。原告は、これを養子小西実から、何回かに分けて借用したもので、(近親者からの借入ではあるが、それだけの理由で、これを仮装とするのは失当で、旧所得税法施行細則第一一条の別表四の一の(イ)の記載事項の区分(六)に於ては主人貸、主人借の区別があつて、法令は、事業と事業主との間の貸借をも認めている程である。)これを、前記の如く借入金一、二〇〇、〇〇〇円を利益金と誤認して、不当に、過大に課税された昭和二四年度分の税金納入にあてたのである。(甲第一二号証の一三、一九参照)

5、仮に、本件各更正決定が、旧所得税法第四六条の二の規定に違反していないとしても、原告の昭和二五、二六年度の各所得額は、原告の主張の通りで、(甲第七乃至一三号証--各枝番を含むi参照)本件各更正決定額は不当であるから、各更正決定は、取消さるべきである。

(一) 原告の昭和二五、二六年度の各所得の低かつたのは、昭和二五年一月一日以降織物消費税が撤廃されたためである。

(1)  そもそも、今次戦争末期から繊維製品の原料は、輸入の社絶により国内産である蚕糸に限られ、大衆必需品まで、皆絹製品(絹紡を含む)であつたが、終戦後数年にして、パルプの原料事情が緩和してから、スフ、人絹及びガラ紡(再製綿糸)が出廻り、貿易再開してより、毛綿が出廻り今日に至つたのであるが、この間の特徴として、売残り品の処分が非常に困難であつて、その処分には多大の犠牲を払い損失の大きかつたことである。例えば、安いスフ、人絹が出廻れば高価な絹布の大衆品が売れなくなり、強い純綿製品が出廻れば、弱い人絹、ガラ紡が売れなくなる状態であつたのであつて、年々品種が変り品質が向上するために、以前の品の売行悪く、その価格は暴落したのである。かかる経済事情に、更に拍車をかけたのが、織物消費税撤廃等の政治的影響であつたのである。

(2)  ところで、呉服業界における卸問屋と小売業者との取引は、例年、夏物は二、三月に、冬物は、七、八月に行われ、特に、冬物は織物界の生命線で、その第一回取引は盛大に行われるのであつて、昭和二四年度は近く統制が解除され、多年抑圧されて居た消費者の購買意慾が、その年の秋冬の需要期には、旺盛に起り多大の需要があるであろうと一般に予想され、ために、生産者、御売業者、小売業者間の取引は、例年より早く行われたのであつた。従つて我々小売業者も積極的に買進んだところ、この第一回の取引が終了した後間もなく、突如として、織物消費税の撤廃が発表され、新聞は「消費税の撤廃で織物は下がるゝ。」と書きたてたので、一般消費者は手を出さず、繊維製品の価格は暴落したのである。そして、原告は、右撤廃迄に多量に仕入れていた絹製品(これに対する右消費税は四〇%であつた。)の価格低落によつて、多大の損失をうけたのである。

(3)  ところで、被告は、右影響は織物消費税撤廃の発表迄に仕入れた商品についてであつて、価格の低落による損失があつたとしても、その大部分は昭和二四年度の損失に帰せられるべきものであるというが、誤りである。

即ち、右織物消費税の撤廃された昭和二四年一〇月以降も、課税された商品は、依然、産地から市場に送り出され、相当市場に停滞し、この課税品も結局小売業者の手によつて販売消化させられたのであつて、(無税品が市場に出廻つたのは昭和二五年に入つてからである。)課税品の値下りによる損失は、結局、卸売業者と小売業者の負担に帰したのである。又、前記の如く、原告は秋冬の需要期は旺盛な需要のあることを見越して、大量の第一回仕入をしたのであるが、予想外に売行不振で、そのため、昭和二五年期首繰越高は、原価計算で一、九九一、一八六円に上り、高い原価で繰越した商品を安い時価で売る結果となつて、これによる損失のため、昭和二五年度以降の差益率が低かつたのである。

(4)  被告は、原告の帳簿書類に売上高の記載が脱漏しているとして、差益率によつて右各年度の所得を逆算するが、その主張は独断である。

原告の差益率の低いことは前記理由によるものであるが、そもそも、被告の主張する差益率を以て原告の所得を逆算することは以下イ、ロ、ハの理由から、根拠薄弱である。即ち、イ差益率、回転率を作成するには数年の日月を要し、従つて、かかる数年前の基礎を以て、刻々、変化する経済界を律することは失当である。ロ差益率、回転率作成資料の調査方法が粗漏である。原告に関する場合、前記増井常男は、昭和二七年六月に唯一度丈、原告の商品の内僅か一三点を調査したのであるが、右一三点の商品につけられている正札は単なる販売予定価格で、現実に売却される価格ではないから、これを売上高とするのは誤で、(差益率は売上確定後である年度末の決算によつて始めて確定し得るものである。)それのみならず、昭和二七年度の商品を調査して得た差益率を以て、課税品の多かつた昭和二五、二六年度の差益率作成の資料とすることの不当は言うまでもない。協議官大田清が原告方に調査に来たのは昭和二八年四月頃のことであるから、尚更のことである。ハ差益率が各店同一で個人差を認めないことは不合理である。差益率が各店同一であるためには、各店の昭和二四年から昭和二五年、又昭和二五年から昭和二六年への各繰越棚卸商品の中で、織物消費税のかかる商品の原価総額を、その店の昭和二五、二六年の各売上総額で除した各比率が同一でなければならないが、かかることは到底考えられない。

(二) 被告は、原告が昭和二五年度の公租公課の内に町民税四四、〇四〇円を包含せしめて所得を計算したと主張するが、原告は同年度の確定申告の際に右町民税が必要経費でないことを指摘されて、折衡の上、帳簿上の利益金八七、四三三円とあつたのを所得額一二六、八〇〇円として申告し、この点については既に解決済である。

(三) 被告は、原告の支払利息を仮装と主張するが、右支払利息は桜井信用組合から手形割引の方法によつて借用した金一二〇、〇〇〇円に対するものである。(甲第七号証の二参照)尚原告は、この借入金を、昭和二五年三月三一日現金一〇、〇〇〇円と金額一一〇、〇〇〇円の手形一通、同年七月一七日現金一〇、〇〇〇円と金額一〇〇、〇〇〇円の手形一通、同年一二月三一日現金一〇、〇〇〇円と金額九〇、〇〇〇円の手形一通、昭和二六年一二月三一日現金九〇、〇〇〇円で、順次、支払つた。

(甲第一二号証の二二参照)

(四) 減価償却費の点については、原告も定額償却法によつたものであるが、その額の相異する訳は、耐用年数の点に於て、被告と見解を異にするためである。例えば、店舗改造費を、被告は、三〇年としているが、店舗の如きものは、日進月歩するもので、三〇年間も旧態のまま推移すれば、時代に遅れ、同業者との競争に敗北するので、原告は、その耐用年数を一五年としているのである。

(五) その他、被告は、度々、原告の所得額についての主張をかえておるのであるが、この一事を以てしても、如何にその主張が根拠を欠くものであるかが判然とするのである。

6、以上述べた通りの理由で、被告のなした本件各更正決定は違法であるから、その取消を求める。

二、被告の答弁

原告主張の1の事実は認める。同2の事実の内、被告が、原告の昭和二五、六年度分の各所得金額及び税額を、原告主張の如く更正処分したことは認めるが、その余の事実は争う。右更正処分は昭和二七年一一月六日付でなされ、そして、右更正処分に於て課された昭和二五年度分の加算税額は一五、三五〇円昭和二六年度分の加算税額は一三、五五〇円である。同3の事実の内、大阪国税局長が昭和二五年度分について審査決定をした日付は昭和二九年八月三一日、昭和二五年度の所得金額についてなした審査決定額は七五二、七二一円、昭和二六年度の所得金額についてなした審査決定額は八三八、四八二円で、そして、昭和二五年度分についての審査決定書は昭和二九年八月二日、昭和二六年度分についての審査決定書は昭和二九年八月三一日、夫々、原告にあてて発送され、夫々、その頃、原告に到達したものである。その余の事実は原告主張の通りであることを認める。同45の事実は争う。

本件各更正決定は、つぎの理由で有効である。

1、法規の解釈について

(一) 旧所得税法第四六条の二の第一項に、青色中告書によつて確定申告をすることが認められている所得の更正をする場合に於て、その帳簿書類を調査し、その調査によつて所得の計算に誤があると認められる場合に限り、これをなすことができる旨記載されているのは、備付帳簿に単純な集計の違算がある場合や、所得金額又は所得税額について、税法の規定に従つていないものがある場合に限り、更正処分を許す趣旨であると解すべきではない。右規定は、青色申告者については、その帳簿書類を尊重すべきものとし、これを何等調査することなく、単に、確定申告書記載の数額からだけ見て、これを否認し、更正処分をすることを許さない趣旨に過ぎず、その帳簿書類を調査することにより、その一部に不実の記載があることが発見された場合、その不実でない部分から、当然、真実の所得が認定し得るような場合には、その認定した事実にもとずき、更正することは差支えないところで、この場合、旧所得税法第四六条の二の第三項に所謂所得を推計して、右推計にもとずき更正したものということに該当しないのである。

ところで、右の如く、青色申告書を更正する場合、青色申告の承認を取消した上でなければ、更正を許さないという訳ではない。元来、申告納税制度を採用する所得税法のもとにあつては、納税者が真実の所得を誠実に申告することにより、始めて所期の目的を達することができるのであるが、そのためには、正規の方法によつて記載された帳簿書類の備付が望ましいところである。併しながら、すべての納税者にこれを強制することは、現下の納税者の能力、業態等から妥当ではないから、所得税法は正規の簿記の原則により申告し納税しようとする者に対しては、特に、青色申告納税制度を設け、そうでない者と異る種々の特典を与え、これを保護し、かつ、制度を助長する方法をとつて居り、そこで、このような方針にそうようにつとめる青色申告者に対しては、仮にその帳簿に若干のかしがあつてもこれを行政指導の方法によつて改善を求める等(など)、つとめて正しい記帳方法によることを期待する方途に出ることが望ましいのであつて、それ故に、旧所得税法第二六条の四第八項(昭和二六年度分については同法第二六条の三第八項)には、青色申告者の備付帳簿に不実の点があつた場合に、青色申告の承認を取消すことができる旨規定するに止め、右取消を絶対的なものとはしていないのである。右規定と前記所得税法第四六条の二第一項とを綜合して考察すると、青色申告承認取消の原因が、所得金額の計算に影響し、所得税更正の原因ともなる場合、青色申告の承認を取消して、青色申告以外の申告とみなして更正処分を行うか、又は、青色申告のまま更正処分を行うかは、個々の具体的事実に応じて、行政庁の選択にまかされているものと解すべきである。

(二) つぎに、前記所得税法第四六条の二の第二項には、青色申告書の更正をした場合、更正の理由を附記しなければならない旨規定されているが、思うに、更正処分とは、法律の定める課税要件の充足したときに抽象的には既に発生している租税債務を、納税義務者の申告行為の場合と同様に、政府の課税標準の調査決定により、所得税額等を確定させ執行力ある具体的租税債務を発生せしめる手続であつて、所得税法が、青色申告書の更正に理由を附記せしめた越旨は、主として、青色申告者に対する更正は、慎重な配慮のもとにすることを要求し、かつ、それにより出来るだけ、納税義務者に当該処分の正当なことを納得させ、以て、無益な争訟の発生を防止しようとする税務行政上の便宜的な配慮から出たものであり、右規定は、所謂訓示的規定に止まるものである。

このことは、旧所得税法第四八、四九条に於て、再調査ないし審査の請求ができるのは、原則として、当該通知にかかる税額に異議がある場合に限り、単に、更正決定通知書に理由の附記されてないことや、理由の間違つていること丈を事由としては、これらの訴願は許されないこととしていることから明かである。

従つて、青色申告書の更正決定書に理由の附記がなされていないとしても、右決定の効力に影響はないものと解すべきである。

2、本件各更正決定の有効であることの具体的理由について

(一) 本件各更正決定は、旧所得税法第四六条の二の規定に反することを理由に取消されるべきものでないことについて。

桜井税務署員大蔵事務官増井常男は、昭和二七年三月から同年六月頃迄の間に、三回にわたつて、原告の昭和二五年度及び昭和二六年度分の所得税の調査を行つたが、その際、原告の帳簿書類を調査したところ、売上帳の記載が所得税法施行細則第一一条によつて定める要件取引の年月日、売上先、品名、給付の内容数量、単価及び金額並びに日々の売上総額--を充足しておらない上に、その記載の省略について被告の承認をうけていないことが判明したばかりでなく、又、その帳簿書類の実質的内容に於ても、これらの記帳の基礎となる現金の管理体制が十分でなく、例えば、調査日における現金在高よりも金銭出納簿の帳尻の方が金二、〇〇〇円少く、又、簿外の株式取引や、店主原告に対する別口支出金額三〇〇、〇〇〇円のあることが認められ、これら簿外支出金の出所が明確でなく、又、借入金についても昭和二五年一月一日現在で一、二〇〇、〇〇〇円、昭和二六年一二月末日現在で一、二一五、〇〇〇円あり、この間に二七〇、〇〇〇円を返済し新たに二八五、〇〇〇円を借入れたことになつているが、右調査時に於て、期末借入金残高一、二〇〇、〇〇〇円の計上額が果して存在するかどうかについて、原告は、十分な立証をつくさず、この点の追及を極力回避しており、そのため、当時、右借入金は仮装なものと断定せざるを得ない状況であつたし、そうすると、右借入金の返済として計上されている右二七〇、〇〇〇円の使途、又、右借入金として計上されている二八五、〇〇〇円の入金は何によるものかが、原告の記帳では不明であつた。(その後の調査によると、この借入金一、二〇〇、〇〇〇円及び二八五、〇〇〇円の借入並びに二七〇、〇〇〇円返済の事実はないことが判明したのである。)

このように原告の帳簿書類の記載は法規に従つておらないし、かつ、その不実性を疑うに足りる相当の理由があつた反面、原告の店頭商品の一品毎の調査による差益率(別表一参照)、原告方の附近にあつて原告と商況を等しくする同業者の差益率(別表二参照)及び大阪国税局所定の所得標準率--大阪国税局が不特定多数の同種業者の内から無作為抽出法によつて調査作成した所得標準率--(別表三参照)を比較して明かな如く、原告の差益率は異常に低いこと(原告が、その差益率が低い理由として述べることが不当であることは後記の通り。)にかんがみ、客観的にみて、原告の帳簿には、仕入金額の記載の脱漏又は過大計上がなければ、売上金(現金店頭販売)の除外記帳があると認められたのであるが、原告の帳簿書類の不実の点は、専ら売上金額について丈でありこの点について修正を行えば、原告の帳簿書類によつて、ほぼ、正確な所得の計算がなし得られると認められる程度のものであつたので、前記青色申告制度育成の趣旨にかんがみ、原告の青色申告の承認の取消をしないで、後記の如く、本件各更正決定をなしたのであつて、青色申告者が、右の如く収入金の除外記帳をしていると明かに認められるとき、何人も首肯し得るような差益率によつて、売上金額を修正した上で更正決定をなすことは許さるべきであること及びその更正通知書に理由の附記がなかつたとしても、右更正決定の効力に影響がないことは、前述の通りである。

従つて、本件各更正決定は、旧所得税法第四六条の二の規定に反し、取消さるべきであるという原告の主張は理由がない。

(二) 本件各更正決定額は正当であることについて。

(1)  昭和二五年度分の所得についての原被告の計算を明かにすれば、別表四の通りで、原被告の計算の相異する点は、イ売上高、ロ公租公課、ハ支払利息、ニ減価償却費の四点である。そこで、右相異点についての被告の計算の根拠を明かにする。

売上高について言及すると、原告は古くから呉服商を営む老舗で、その店舗は桜井市の目抜通に位し、在庫品は豊富であり、営業内容も充実しておるところ、・その記帳による差益金額は、別表一の通りで、その異常に低いこと、売上金額に除外記帳がなされていると客観的に認められること前述の通りであるから、かかる場合は原告について、客観的に妥当な差益率により換算した数額を以て、原告の売上高とすべきである。そこで、被告は、原告の在庫品一品毎に仕入価格と売上価格とを調査して、各品毎の原価率(仕入価を売上価で除したもの)を算出し、更に棚卸表によつて、各商品の重要度を乗じて計算した結果、原告の平均原価率は八三・〇一%、その差益率は一六・九九%が客観的に相当であると認められたので、売上原価を右平均原価率で除した額五、九四二、四五五円が、原告の昭和二五年度分の売上高と認めるのが相当であるとしたのである。

公租公課の点について言及すると、原告の計上額八八、六二五円の内には、旧所得税法第一〇条第三項の規定によつて必要経費に算入されない町民税四四、〇四〇円が含まれていたので、これを除外したのである。

支払利息の点について言及すると、前記の通り借入金は存在しないので、これに対する利息の計上は仮装であるから、これを除外したのである。

減価償却費の点について言及すると、被告の算出方法は定額償却法によつたもので、その詳細は別表五の通りである。

(2)  昭和二六年度分の所得についての原被告の計算を明かにすれば別表六の通りで、原被告の計算の相異点は、昭和二五年度分についてと同様である。そこで、右相異点についての被告の計算の根拠を明かにする。

売上高について言及すると、前記と同様の理由及び昭和二五年度分と昭和二六年度分の同業者の差益率、大阪国税局所定の所得標準率の各推移の状況(別表二、三参照)よりみて、原告の昭和二六年度分の平均原価率は八三%とするのが相当と認められたので、売上原価を右原価率で除した七、九〇〇、〇〇〇円(千円以下切捨)を以て、原告の昭和二六年度分の売上高と認めるのが相当としたのである。仮に、右認定が不相当であるとしても、同年度分の一品毎の差益率は一四・六八%であるから、これから換算すると、原告の売上高は、少くとも、七、六八六、〇四七円である。

公租公課の点について言及すると、原告の計上額二〇、六八九円の内には、資産再評価法第一二〇条によつて、所得計算上の必要経費に算入されない再評価税四、三四〇円が含まれていたのでこれを除外したのである。

支払利息の点について言及すると、これを除外した理由は、昭和二五年度分について述べたと同様である。

減価償却費の点について言及すると、被告の算出方法は定額償却法によつたもので、その詳細は別表七の通りである。

(3)  原告は、その昭和二五、二六年度分の所得の低いのは、織物消費税の廃止されたためであると主張するが失当である。織物消費税の廃止を勤告したシャウプ勧告は、昭和二四年九月中旬、全国の新聞紙上に掲載され、近き将来、右廃止の行われることは衆知の事実であつたから、原告が、これを看過して、繊維製品の価格の低落を目前にして多量の商品を買入れることは考えられないことである。現に、シャウプ勧告発表以来、繊維業者が仕入を手控えたため、繊維相場は暴落したのである。

仮に、原告の昭和二五、二六年度の所得に対して、原告主張の織物消費税撤廃による影響があつたとしても、右影響は、ひとり原告に止まるものではなく、広く、同業者全般に及んだのである。それであるのに、別表一、二に示すように、原告は、同業者の同年度所得に比して、又、毎年作成され、従つて織物消費税撤廃の影響も加味されている大阪国税局所定の同年度の所得標準率に比しても著しく所得の低いことは、原告が、右影響を誇張して所得を過少申告しているものと断ずるの外はないのである。又、右影響はシヤウプ勧告の発表された昭和二四年九月以前に買入れた商品についてであつて、価格の低落による損失は、昭和二四年度の損益に帰すべきである。何故ならば、通常統計によると、回転率は、郡部では年三、四回で、しかも、昭和二四年頃は、七月に絹製品の統制撤廃、その後間もなく、綿製品の統制撤廃も行われて、繊維製品に対する需要も大きく、回転率もよかつた筈であり、そして、原告の同年度の仕入金額は、以後の各年に比して、特に多額といえないからである。

(尤も原告の帳簿によると、原告の昭和二四年度期首棚卸高は九八八、五三二円、仕入高は二、六一〇、三八六円、期末棚卸高は一、九九一、一八六円、売上原価は一、六〇七、七三二円即ち期首在庫高に対する回転率は一・六四であるが原告の昭和二四年度の帳簿も売上金の記帳除外があつて、同年度の所得の確定申告も更正処分をうけているので、回転率は、より大であつたのである。)

(4)  よつて本件各更正決定は正当で、原告の本訴請求は失当である。

第三、証拠関係<省略>

理由

第一、原告主張の1の事実及び同2の事実の内の被告が原告の昭和二五、六年度分の各所得金額、税額を原告主張の如く更正処分したことは当事者間に争なく、右各更正処分のなされた日付、右各更正通知書に記載された更正の理由、右通知書が原告に送達された日及び右各更正処分に於て課された昭和二五、六年度分の加算税額が、いずれも原告主張の通りであることは、成立に争のない甲第一、四、五号証によつて明かである。

同3の事実の内、原告が、右各更正処分について、大阪国税局長に対し、原告主張の日付で、再審査請求書と題する書面を提出したこと、これに対して、大阪国税局長がなした審査決定における昭和二五、六年度分の各税額、加算税額が原告主張の通りであること、右各審査決定書に記載された審査決定の理由が原告主張の通りであること及び右各決定書が遅くとも原告主張の頃に原告に送達されたことは、当事者間に争なく、大阪国税局長が昭和二五年度分についてなした審査決定の日付、昭和二五、六年度分の各所得金額についてなした各審査決定額が、いずれも原告主張の通りであることは、成立に争のない甲第二、三号証によつて明かである。

第二、そこで、まず、本件各更正通知書には具体的な更正の理由の記載を欠くから、右各更正決定は違法で、従つて、取消さるべきであるとの原告の主張について考察する。まず、本件の各更正通知書には、更正の理由として、いずれも原告主張の通りの記載がなされていることは、前記認定の通りである。

ところで、前記甲第四、五号証によると、本件各更正通知書は通常、各税務署に印刷備付けてあると思われる更正通知書用紙記載の用式を転写し本件の具体的事案に則して、各項目に所要事項を記入して作成されたものとしか思われず、特に、右理由の記載は、通常一般に、更正の理由となるのであろうところの理由を定型化して印刷してあるものを、何等本件の具体的事案に則して加削することなく、そのまま、転写したとしか思われないような記載である。

これによると、本件各更正通知書には、全然、理由の記載がないと、断じても差支えないと考えられるが、これを緩やかにみれば、本件事案に則して、右更正の理由として、1売上金(収入金額)の過少、2販売原価の過大、4経費の過大、3所得金額の過少の合計四点の理由の記載がなされているものと認むべきであろう。

併しながら、青色申告書の更正をなす場合には、その更正通知書には、更正の具体的な理由の記載を要し、その理由を全然欠くか、もしくは、右の如き程度の抽象的な理由の記載では、更正決定は違法で、無効もしくは取消を免れぬものと解するのが、旧所得税法第四六条の二の法意に適合するものと考える。その理由は所謂白色申告書更正の場合をも参酌しつつ、以下述べる通りである。

旧所得税法第四六条第七項によると、政府が、所謂白色申告書について更正したときは、その更正通知書には、その年分の総所得金額及び課税総所得金額について、同法第九条第一項各号に規定する所得別に、その金額を附記して、これを納税義務者に通知する旨規定しているが、思うに、白色申告書の更正をなす場合、その更正通知書に、右の如き所得別の金額の附記を要請しているのは、同法第二六条第一項第六号に於て、確定申告をする場合、その申告書に総所得金額及び課税総所得金額の計算の基礎を記載することを要件としていること(右第二六条第一項によると、確定申告書には、右の計算の基礎を記載する外、尚、所得の基因たる資産もしくは事業の所在地又は所得の生ずる場所その他の事柄の記載を納税者に要求しているが、それは、徴税官吏が、当該確定申告書による所得の申告額」の、当否を判断することを容易ならしめるためで、この事は、申告納税制度が円滑に運営されるための納税者に対する不可欠の要請というべきである。)と対応するもので、その趣旨は、更正にかかる総所得金額及び課税総所得金額の計算の基礎従つて更正の正当性を明らかにする一方、納税義務者をして、申告額及び更正額の当否を判断反省せしめ、納税者をして、納得のゆく納税をさせることと、更正の不正を争う場合の争点の明確化と証拠資料集めとを容易ならしめたるためのものであると考えられ、それ故に、右金額の附記は、叙上の如き明朗な納税制度を確立するための徴税官庁に対する絶対的な要請で、従つて、それは、更正決定の重要不可欠の構成部分というべくこれを適法かつ有効ならしめる一の要件であると解すべきものと考える。

ところで、旧所得税法第四六条の二の第二項によると、青色申告書の更正をなす場合、その更正通知書に、白色申告書更正の場合における前記金額の附記に代えて、更正の理由を附記しなければならないと規定されているが、これは、青色申告制度の設けられた趣旨から、加えられた変更と考えられる。

即ち、旧所得税法第二六条の四、同法施行細則第一〇条乃至第一九条によると、青色申告者は、白色申告者と異り、その所得の計算に関しては、政府の定める帳簿書類を備え付け、その所得が正確に計算できるように、正規の簿記の原則に従い、整然かつ明瞭に記録し、その記録に基き、貸借対照表及び損益計算書を作成しその他帳簿の記載事項及びその方法について詳細な制約をうけ、又、青色申告書には、白色申告書の場合と同様、その年分の総所得金額及び課税総所得金額の計算の基礎等を記載することを要する外、貸借対照表、損益計算書その他所得又は純損失の金額の計算に関する明細書を添付しなければならないものとされ、又、旧所得税法第四六条の規定によると、白色申告書の更正の場合には単に、政府の調査により更正をなすことができる云々と規定されるに比して、同法第四六条の二の第一項によると、政府は、青色中告書の更正をなす場合には、その帳簿書類を調査し、その調査により、所得の計算に誤があると認められる場合に限り、これをなすことができるものとされていること等からみると、青色申告書の更正の場合に、更正通知書に附記すべき理由は、白色申告書の場合の如く、単に、その更正にかかる総所得金額及び課税総所得金額の計算の基礎を明かにするための旧所得税法第九条第一項各号に規定する所得別の金額の如きものを掲記するに止まらず、更に、右金額の由来する理由を、帳簿書類その他について、一層具体的に記載することを要するものと考えるべきで、これによつて、前記白色申告書更正の場合に所得別の金額を記載しなければならないとされるところの趣旨を、一層強めんとするもので、従つて、又、右理由の附記は、青色申告書更正決定の重要不可欠の構成部分をなすもので、更正決定を適法かつ有効ならしめる一の要件と解すべきこと、前同様である。

そうすると、仮に、本件各更正通知書に前記の如き理由の記載があると認めても、その理由は、極めて抽象的で、旧所得税法第四六条の二の第二項の要請にそわない不法なものと言うべきで、このかしは、本件各更正決定の取消原因となるものと解する。

そして、被告は、本訴に於て、はじめて、右更正の理由を具体的に述べるが、これによつて、右のかしが追完されて、右更正決定を適法かつ有効ならしめるものでないことは、更正の理由の記載を更正決定の適法かつ有効ならしめる要件と解すべき前記説示からみて、当然のことである。

叙上の見解と異るところの被告の主張は、これを採用できない。

そうすると、その余の点を判断をするまでもなく、本件各更正決定は、違法なものとして、これを取り消すべきであるから、原告の本訴請求は、正当として、これを認容すべく、訴訟費用の負拠につき、民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 小西宜治 井上三郎 野田稔)

表一~七<省略>

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